7月の下旬、用事の帰りに不忍池のほとりを通りました。夏祭りで風鈴が出ているらしく、涼みがてら覗いていくつもりでした。時刻は夕方。蓮は朝の花ですが名残りくらいは見られるだろうと当てにしていました。
池にせり出した蓮見デッキに、風鈴の回廊が組んであります。短冊がびっしり下がっていました。その下は、一面の蓮です。

遠目にも、ピンクが点々と見えます。探すというほどのことはありません。
花托と、閉じない花
近くで見ると、形が2通りありました。ひとつは、先が細くとがって、色の濃いもの。葉のあいだから、これが伸びています。

もうひとつは、ふっくらと膨らんで、外側の花弁がわずかに反り返り、先のほうに橙が差しているものです。

まんまるのほうが、閉じた花です。蓮は朝に開いて、昼を過ぎると花弁を閉じていきます。夕方の池に立っている丸いものの多くは、蕾ではなく、その日の分を咲き終えた姿でした
丸いものの隣に、花弁をすっかり落とした花托が立っていました。蜂の巣のような形で、まだ緑色をしています。茶色くなった雄しべが、縁から垂れたままでした。

とがったの、まんまるの、それから花托。7月の夕方の池には、この3つが並んでいました。
弁天堂の手前に白い花が2輪、開いているのを見つけました。

蓮の花は3日から4日のあいだ、朝に開いて昼に閉じるのを繰り返し、最後の日は開いたまま散っていくのだそうです。夕方に開いている花は、それだけ先へ進んでいるということになります。
氷を削る音
一通り歩いて、喉の渇きを覚えました。屋台が並んで、そこかしこから香ばしい匂いがしています。人も多く出ていました。
屋台でパッションフルーツのかき氷を買いました。削っているのは電動の機械で、うなりのような音がするばかりです。涼しい音のほうは、風鈴が受け持っていました。
赤い敷物の上に置くと、削った氷の山の天辺から、黄色い蜜がゆっくり下りていきます。

酸味の強い蜜で、暑さでゆるんでいた頭が一度しゃんとしました。下のほうまで蜜が回るころには氷がすっかり緩んでいて、匙では追いつきません。観念して、傾けて飲みました。
8月の上旬、朝の池
8月の上旬、朝の8時半に同じ場所へ行きました。今度は時間を選んでいます。
池へ向かう道で、帰ってくる人と何度もすれ違いました。朝から見に来ている人が、それなりにいるようです。
入り口を入ったところから、もう蓮の葉が見えています。デッキに立つと、緑が一面に広がっていました。手前に早くも閉じたまんまるが1本立っていて、その向こうにピンクが点々と続いています。

先客が何人かいて、めいめい携帯を構えています。夏祭りの最中ですが、屋台の白いテントはどこもまだ開いていません。低い機械の音だけがして、香ばしい匂いはどこからもしませんでした。
風鈴も、7月ほどには鳴っていなかったように思います。風の加減だったのかもしれません。
花は開いていました。花弁が外へ反って、真ん中に黄色いものが盛り上がっています。雄しべの束です。7月にまんまるだったものは、朝にはこの形をしていたわけです。

横から見ると、花弁が幾重にも重なっているのが分かります。すぐ後ろに、夏まつりののぼりが立っていました。

花の向こうに、風鈴の回廊と、まだ開いていない白いテントが見えます。7月の夕方に立っていたのと同じ場所です。

朝の桃色は明るく澄んでいて、夕方の池で見たものより淡く見えます。光の向きひとつで、色がこれだけ変わります。
弁天堂の手前まで来ました。7月には、白い花が2輪だけでした。

同じところに、いくつも開いています。その向こうに弁天堂の屋根があって、さらに向こうにマンションが立っています。以前、小田原の堀端で蓮を見たときは、背景が石垣と空だけでした。同じ花でも、背負っているものが違うと、これほど別の顔になるものかと思いました。
不忍池メモ
- 場所:上野恩賜公園の南側。JR上野駅の不忍口から歩いてすぐです。蓮見デッキは池の南側にあります。
- 見頃:例年6月の下旬から8月の下旬にかけて咲き、見頃は7月の中旬です(上野案内所の案内による)。
- 時間帯:早朝から午前9時ごろまで。昼を過ぎると花弁が閉じていきます。
- 朝8時台には、もう閉じ始めているものも混じります。
- 夕方でも花は見えますが、多くは丸く閉じた姿です。開いたままのものも混じります。
- 色は朝のほうが淡く明るく、夕方のほうが濃く見えます。
- 蓮見デッキの周りは蓮池がよく見えますが、日陰がありません。帽子と飲み物を持って行ってください。朝8時台は屋台もまだ開いていません。
おわりに
とがったのは、これから開くもの。まんまるは、その日を終えたもの。形が違うのは、時間が違うからでした。
夕方に行けば丸く閉じた姿が並び、朝に行けば開いた花が見られます。どちらを見に行くかで、出かける時刻が決まります。